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首都圏建設アスベスト訴訟−東京地裁が国に賠償を命じる−
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建築現場でアスベスト(石綿)を吸ってアスベスト関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫等)に罹患した建設作業従事者とその遺族が、国と建材製造企業42社を被告として提訴した首都圏建設アスベスト訴訟で、2012年12月5日、東京地方裁判所は、国に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
アスベストは、安価で耐火性に優れていることから「魔法の鉱物」と言われ、日本では輸入されたアスベストの多くが建材に使用されました。しかし、アスベストは発がん物質なのです。そのため、建設作業従事者は、その作業過程で石綿粉じんに曝露した結果、長い潜伏期間を経て、現在多数の被害者が発生しています。しかも、アスベスト疾患は極めて予後が悪く、原告308名(患者単位)のうち死亡者の割合は、訴訟提起時には全体の約5割、提訴から4年半を経過した現在(2012年12月17日)では6割以上に及んでいます。
このような他に類をみない深刻な被害が生じたのは、1972年には国際機関(ILO、WHO)によってアスベストの発がん性が明らかにされていたにもかかわらず、国が、建築現場における石綿粉じん曝露防止措置を怠ったうえ、2006年に至るまで石綿含有建材の製造を全面禁止せずに放置したからです。また、建材製造企業が、アスベストの危険性を警告することを怠り石綿含有建材を製造販売し続けたからです。
東京地裁判決は、国が1981年以降に防じんマスクの着用や適切な警告表示を義務付けるなどの措置を執らなかった規制権限の不行使は違法であるとして、労働者との関係に限ってではありますが(一人親方と零細事業主の救済は否定)国家賠償責任を認めました。
他方、建材製造企業については、企業間の共同不法行為の成立を認めず、各企業が製造販売した建材と各原告の発症との因果関係が不明であるとして、その責任を免罪しました。もっとも、判決も、企業が警告義務を怠ったことは明確に認めており、その意味で企業の責任が否定されたわけではありません。さらに判決は踏み込んで、企業が被害者に対して「何らの責任を負わなくてもよいのかという点については疑問がある」とし、「立法府及び関係当局における真剣な検討を望む」と政治的解決を求める異例の付言を述べました。
判決は不十分な点はありますが、建設アスベスト被害について初めて国の責任を認めた判決であり、全国の建設アスベスト訴訟の闘いにとっても極めて大きな意義があります。
原告らの「生命あるうちに解決を」の願いは切実です。原告・弁護団は、原告らに対する謝罪と賠償だけでなく、今後発症する潜在的被害者の早期救済のため、「建設アスベスト被害者補償基金」の創設を求めています。
事件は控訴により高等裁判所の闘いに移ることになりますが、国と企業は、本判決を真摯に受け止め、早期に建設アスベスト訴訟を全面的に解決するべきです。
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